2003/02/28 TokYO unD.GD.NEt


 ・秋庭俊『帝都東京・隠された地下網の秘密』洋泉社,2002.12.10.(1900円)
 
 東京には戦前から秘密の地下道が張り巡らされており、政府はこの事実を国民から隠し続けている、と主張する本。と聞いてどう思われるでしょうか。僕はあんまり違和感なく、ああそういうこともあるべな、地下のことなんか普通なんにも知らんし、まして戦前ともなれば防空のためにそこらじゅう穴ぼこだらけだったべし、となんとなく納得してしまったのですが。
 市販されている地図の奇妙な食い違い、地下の路線が書き込まれたGHQのインテリジェント・リポート、営団公表の図面に紛れ込んだ存在しないはずの地下鉄構。状況証拠を丹念に拾い集めて繋ぎ合わせ、著者は知られざる東京の地下の歴史を描き出そうとします。なにしろ地味な状況証拠ばかりなので、一つ一つの根拠は強いとはいえないのですが、これだけ集まるとさすがに説得力があります。東京には戦前からかなりの規模の地下空間が(地下網と表現されている通り、何層にもわたって網の目のように)作られていたことは、どうやら間違いないようです。ただし、政府がなぜ隠すのか、そこで何をやっているのかは具体的には示されません。陰謀論の方向には走らず、地下網の存在証明だけに的を絞って書かれているので、荒唐無稽と罵られそうな題材を扱っているにも関わらず、妙にストイックな印象を受ける本です。言い換えれば、地味な本です。加門七海の『大江戸魔方陣』『東京魔方陣』のようにオカルティックな話を期待すると肩すかしを食らうかもしれません。
 とはいえ、それでも面白く読めました。戦前の自由にものが言えない時代に、設計士が建設記録の中で危険を冒して真実を残そうとしていたり、一見クソつまらない政治家のスピーチから地下鉄建設の手がかりを得たり、不自然な単位の違い(他はメートル法なのにある区画だけヤードが使われている)から建設年代の相違を見出したり、東京史の権威に「実は地下についての本を書いているのですが」と言いかけたら、言い終わらないうちに「非常識な」と怒られてびっくりしたりと、地味ながらなかなかドラマティックです。いまいち東京の地理に明るくないのでピンと来ないところも多々あったんですが、東京に住んでいて、よく地下鉄に乗る人ならもっと楽しめるんじゃないでしょうか。
 地味なのには理由もあって、強力な証拠になる図面や営団OBへのインタビューもあったのに、出版差し止めを食らいそうだったりインタビュイーの個人を特定される可能性が大だったりで、掲載を見送らざるをえなかったのだそうです。インタビューはともかく図面の方はネットで公開すればいいんでないの、と思ったら、著者のサイトで公開を予定しているみたい。おお、ハッタリじゃなかった。しかも面白いことに、ゲーム化まで考えているとか。
 
 ところで、日本は非常に詳細な地図を簡単に手に入れられることで稀有な国です。多くの国では防衛上の観点から、一般人が目にすることのできる地図は正確に描かれてはいません。現代においても、間違いがない地図のほうが珍しいのです。ですから、この本で東京の地図が人知れず改描されていると聞いて、日本の諜報機関もそれなりのことはやっているのだなあと、むしろちょっと安心したくらいです(そしてこれが、この本の主張にあまり違和感を感じない理由です。トラップストリートの例もありますし、地図に欺瞞情報が混入しているというのは目新しい話ではありません)。まあ敗戦当時からGHQにはバレバレだったみたいで、今も秘密にしておく意味があるのかわかりませんが。
 
 

2003/02/27 恥ずかしいので お面を被りました


 ・上田ハジメ『青春PREDATOR』1997.12.(購入価格1000円)
 
 とらのあなの中古同人誌売り場でぼんやり棚を見てたら、上田ハジメの『青春PREDATOR』が1000円だったのでびっくり。この本、表紙がえらくかっこいいプレデターの絵で、エイプレをこよなく愛する魚蹴さんとしては以前から気になっていたのですが、高額同人誌のショーケースの中で4000円とか値札をつけて売られていたため手を出す気になれなかったものなのです。
 あんまり厚い本でもないし、1000円でも割高感は拭えませんが、まあ外れてもいいや、フリクリ漫画好きだし、と買ってみたところ、ちゃんと要点を押さえたプレデター(と『痕』)のパロディになってて大喜びでした。女子トイレで薬調合するし、彼女が皮剥がれて吊るされるし、仏壇にトロフィー飾ってあるし、最後は自爆するし。
 面白かったです。これで長年の懸案が一つ片付きました。
 昔の高額同人誌、値崩れしてるのかな。それはちょっと嬉しいかも。
 あと、同人誌の書誌情報ってどう書けばいいんだろう。
 
 

2003/02/25 イシルドゥア・スウィフトキラー!(技名)


 なんか最近TTTとダーガーの話題ばかりな気がしますが、今日は給料が入ったので早速PS2の指輪ゲーを買ってみました。おー乱戦だ乱戦だ。いっぱい入り乱れて殴り合っています。同じPS2の「真・三國無双」シリーズの画面を見て、ファンタジーでこういうゲームがあったら楽しいだろうな、と思ってたら、よりによって指輪で出たからびっくりだ。映画の映像や俳優・声優を使ってて、随分と贅沢な作りです。とりあえず中庸キャラのアラゴルンでやってみることに。アモン・ヘンでウルク=ハイを50人以上ばったばったと斬り倒してみたり、なかなか楽しいです。初プレイだけど順調に進めるなあ、と思ったら、初期設定は難易度が「易」なのでした。キャラクターが3人選べて、技が色々習得できて、隠し要素もあって、それなりにやりこみがいのあるゲームではないでしょうか。
 
 SFマガジン買ったら『トラベラー』の広告が載っててびっくり。クラシックトラベラー再版するんだ。日本語版公式サイトはここですね。株式会社雷鳴とな。やっぱりアザンティ・ハイ・ライトニングとかから取ったんじゃろか(タイトルしか知らないけど)。イラストは加藤直之! 昔のトラベラーの箱絵はものすごくかっこよくて、広告見て憧れてたんだけど、当時はSF知識のない悲しさで手を出せなかったのよね。
 今度の絵もCGじゃないといいんだけど……ギャラリーを見るとCGっぽいな(がくり)
 あと、今月のSFマガジン、橋本晋笹井一個が挿絵描いてて、個人的にはとても嬉しいんだけど、なんだかSFジャパンみたい(笑)。
 
 雑誌繋がりでもう一つ。モデルグラフィックスを立ち読みしたら、なんと吉原昌宏の連載が始まってるじゃないですか! わー、これは嬉しい。モデグラなら単行本出るよね。楽しみです。
 
 
 ・『新潮』3月号……おおっと。バリー・ユアグロー特集ですってよ、旦那さん。
 
 

2002/02/23 コミティアとTTT


 速水さんとこの売り子をするためにコミティアへ。したら会場前で菊地さんとエンカウント。
 「どうもどうも」
 「どうもどうも」
 「指輪見に行ったそうで」
 「ええ。菊地さんは行きましたか」
 「いやあ、まだなんですよ」
 「そうですか、ははは(優越感)」
 「まあでも僕はナオンと行く予定があったりなかったり(勝ち誇り)」
 「な、なにー!?」
 
 朝っぱらから敗北する魚蹴さん。 おのれ! 菊地(敬称略)!

 店番しているわれわれ(速水さん&吉井さん&魚蹴さん)の間で今ホットな話題といえば、そう、ヘンリー・ダーガーです(やなブーム)。吉井さんが次のコミティアには出たいと言っていたので、ヴィヴィアン・ガールズ・ファンブックとかどうかと話したりしたのですが、吉井さんは固く拒絶。えー、だめか(だめだろう)。そういえば、コミティアは創作同人誌即売会なので、ファンブックって時点でそもそもだめなのでした。設定だけ見ればいかにもアニメになりそうなんだよね、ヴィヴィアン・ガールズ。余裕でゲーム化されそうだし。
 
 今回は同じビッグサイトでワンフェスが開かれていて、行ったことないので見てみたかったんですが、結局行けず、残念。王子はWARPS基本セットの美品を2000円で手に入れたとかで大喜びしてました。あと、王子はRafmのメタルフィギュアで、なまらかっちょいい"War Turtle"(戦争用大亀で、爬虫類人を3人載せられる)というのも買っていて、僕に買値で譲ってくれました。わーありがとう王子。いい旦那さんだよ、ゴクリ、ゴクリ。
 
 コミティアの方もあんまり回れなかったけど、まあ金欠だったからちょうどいいや。数少ない購入物の中だと舞村そうじさんの『エミリアと旦那様総集編』がよかったです。「毎回イベントに新刊は出せそうもない、しかし来てくださるお客さんを手ぶらで帰せるか」ということで(えらいなあ)無料ペーパーに毎回掲載された2ページの漫画の総集編で、こうして見ると一介の読者に過ぎない身としても感慨深いものが。97年からかー。僕が読んでるのは5話目からかな。書き下ろしの最終話が追加されて、きれいにまとまっておりました。
 同人誌以外では、ゴーリーの新刊買ったり。商業出版なのに、コミティアで売られててこれほど違和感がない本も珍しいんじゃなかろうか。
 
 終わった後は池袋で焼肉食って、TTT二回目見に行きましたとさ。あーもう。面白いよう(めろめろ)
 蛇の舌がオルサンクからサルマンの軍隊を見たとき、涙を流してるのに気付きました。そんなに感動したんだ……(このくらいのネタバレはいいよね? もう公開してるんだし)
 
 
 ・War Turtle……ここのページのリンクから、写真が二枚見られます。
  http://www.meramic.com/tgta/gallery/warturtle1.jpg と
  http://www.meramic.com/tgta/gallery/warturtle2.jpg ね。
  ……いや、見せびらかしたいんですよ(直球)。
 
 ・Book of Brilliant Things……ホークムーン、出るみたいです。
 
 ・河出のゴーリーページ……なんでTシャツはレディースサイズなんだ、バキューン(王子風に怒りを表現)

2003/02/22 TTT一般公開日


 二つの塔、原作再々読終了。あとはスクリプト読んでまた行こっと。
 
 今日は家でもじゃもじゃする日。最近休日出勤が多かったり、休みの日も遊びに出かけてることが多かったので、こういうなんもしない日は久しぶり。洗濯したり、ドラゴンクォーターようやっとクリアしたり。近所にメダルオブオナー売りに行って帰りに古本買ったり。でも指輪ゲーは我慢した。オデエラーイ。
 
 ダーガー展のチラシを見返して気付いたんですが、ダーガーの死後に彼の作品群を発見した、アパートの家主のネイサン・ターナーって人、自分もアーティストだったんですね。「シカゴ・バウハウスの中心的アーティスト、写真家、そして教育者」だったらしく。こういう人に発見されたってのは運がいいなあ。だって客観的に見たら、ただの素人の描いた膨大な量のエロ絵ですよ。捨てられても全然おかしくない、というかむしろ積極的に捨てるんじゃないか。他人の妄想によほど寛容な人でもない限り。

 最近、二階堂奥歯さんの八本脚の蝶(2003年1月12日(日)その2)で知ったChillout Roomsが欲しくてたまりません。
 僕も小さいときから狭いところにもぐるのが好きな子供でしたよ。今に至っても布団の中に潜り込むのが好きです。負の走光性? 冬は厚着できて布団も重くて嬉しい季節なのですが、いまや春も間近。つまんなーい。もう一年中冬だったらいいのに! 『バケツ一杯の空気』とか、理想の世界だよ!
 そんなわけでChillout Roomsが僕を捉えて放してくれません。家具をここまで欲しいと思ったことは生まれて初めてです。ハァハァしております。いや待て。揺れるなおれの心。しっかり! まずはこれが入る部屋に引っ越さないと。
 そういえば3月は掘骨砕三(エロ漫画のふりをして椎名誠SFみたいなイヤ漫画をたくさん書いてる人。僕は好きだけど、気の弱い人にはオススメしません)の新刊が二冊も出るんですが、うち一冊のタイトルが『閉暗所同好会』って言うんですよ。前に雑誌に載ってたのを立ち読みしたときの記憶だと、サタスペでやった地上地下化計画みたいなことをやってたような。
 いいなあ閉暗所。僕の中の穴掘り動物的サムシングに訴えかけるものがあります。潜りたいー。

 ・テリー・ホープ『ワイルドライフ』有限会社リンガフランカ訳,グラフィック社,2003.3.25.(3500円)
 
 下北沢のヴィレッジヴァンガードで見つけた野生動物写真集。類書が多い分野の本ですから、冷やかしのつもりでページをめくっていたはずが、思いがけずとてもいい本で、つい買ってしまいました。ナショナル・ジオグラフィックなんかの誌面を飾った動物写真を集めていて、どれもこれも惹き込まれる作品ばかりです。まんまと策にはまって衝動買いしたわけで、悔しいなあ。非常にクオリティの高い写真集です。出たばかりなので見つけやすいでしょう。おすすめします。
 
 ・出版社サイトでの紹介……写真が売りの本なのに、こんなに小さい画像でええのんかー。
 

2003/02/20 刑事まつりリベンジ


 かわしまさんと下北沢のスズナリへ。前回見られなかった『刑事まつり』を見るのです。混んでるはずだから早めに行こうということで、充分時間に余裕を見て行ったら、あれあれ、人っ子ひとりいないよ? 訝りながら窓口を見てみると張り紙が一枚。
 
 「『刑事まつり』2/20(木)の12:30の回は、まことに勝手ながら休映とさせていただきます」
 
 ……いや。待ってくれ。俺はこのために有休取ったんだよ? ちょっと待ってくれよ。なんでこんなピンポイントで休映なんだよ。なあ。畜生こりゃどういうことだッ(帽子を引き毟って地面に叩き付けつつ)
 
 呆然と佇むわれわれ二人。何かの呪いか。二つの塔観て喜びすぎたのが悪かったのか。
 予定があるので次の回に延ばすこともできず、またしても打ちひしがれつつ去ることに。ヴィレッジヴァンガードや古本屋を漁って予定外の散財をした後、渋谷で吉井さん速水さんに合流。『ボウリング・フォー・コロンバイン』を見る予定でしたが、空席状況を映画館に訊くともう次の回が埋まってるそうで。ああ、ああ、どうせそんなことだろうと思ったよ。しょうがないので第二案に変更。前から興味のあった『ヘンリー・ダーガー展』を見に、ワタリウム美術館へ。
 
 これは面白かったです。大判の紙に描かれた性的ファンタジーの連作を展示しているんですが、ファンタジーの対象であるふたなり少女だけでなく、背景の描き込みが丁寧なのが印象的でした。特に遠景一面に広がる雲が綺麗。ワールドメイカーだったんですね。19歳のときから81歳で死ぬまで描き続けてたってのは、その執念に感心すると同時に、あまりの孤独さに胸が塞がります。当時ネットがあれば、神認定されただろうにね(それが彼にとっていいことかどうかは別にして)。
 
 それにしてもワタリウム美術館、変な作りしてますね。地下の美術書売り場の梯子つきの高い本棚、いいなあ。あんな本棚のある部屋に棲みたい。
 ちなみに次期展示は『建築家・伊東忠太の世界(仮称)展』! おおっと。これは見に行かねばなりますまい。期間は4/12〜8/31だそうです。伊東忠太ってのはこんな人ね。妖怪好きの建築家として有名な人です。"Architecture"に「建築」の訳語を当てたのも彼だとか。
 
 
 ・文化の翻訳 伊東忠太の失敗……今回検索したら見つけた文書。「建築」って訳語は間違って使われてるという話です。へええ。
 
 ・下北沢スズナリ これからのラインナップ……3/22〜4/4、『帰ってきた刑事まつり』だそうです……。
 
 

2003/02/19 The Great Gray Beast Feburuary


 ・Clive Barker "The Thief of Always"HarperPaperBacks, 1993.(U.S.$6.99)
 
 ご存知クライヴ・バーカーのファンタジーです。なんとペーパーバック1冊を4日で読み終えてしまいました。オデスゴーイ。とちょっといい気になりかけましたが、考えてみたらこれ児童書だ。
 寒くて陰鬱な2月、10歳の少年ハーヴェイ・スウィックは、リクタスという怪しい男に誘われて、フッド氏のホリデイ・ハウス(別荘)なる不思議な屋敷を訪れます。そこは数々の驚異に満ちた魔法の館でした。訪れる子供を楽しませるために作られたようなこの館で、時を忘れて遊ぶハーヴェイ。しかし、そこは見た目どおりの楽園ではなかったのです……
 というお話。装飾過多なところがない素直な文章で、するする読めました。物語が大きく方向を変える中盤からの展開が楽しいです。ハーヴェイかっこいい。好きな脇役はミセス・グリフィン。XI章終盤のハーヴェイとの会話なんか、とてもいいです。
 『ヘルレイザー』や『血の本』で知られるバーカーですが、実は根っこがファンタジーの人です。この本も児童向けながら、イメージの豊かさは素晴らしいです。そして挿絵! バーカーの絵、かっこいいなあ。吉井さん曰く、「あんな小説書けて、こんなかっこいい絵描けて、しかもホモで、もう怖いもんなしだよな」。まったくです。その上バーカー、映画まで撮るんだからな。
 『アバラット』が映画化されるという話だし、今のファンタジーブームの息が長ければ、そのうちどこかからつるっと翻訳されそうな気もします。もし出たらぜひ手にとって見てください。
 
 ・Clive Barker's Official Web Site……ギャラリーもありますよ。

 TTT感想、上げました。ネタバレ注意。
 
 ・TTTスクリプト(重度ネタバレ)
 

2003/02/15 The Two Towers


 見てきました!
 すごい、素晴らしい、もうたまらんです。
 期待を裏切らない出来でした。めちゃめちゃ満足しつつも、また見たくてたまりません。すぐにでも!
 ネタバレに配慮して、感想は後ほど別ページで。

 すっかりご無沙汰してしまっているセプタングエースさんのところで「14Tシャツ」作成企画が!
 デザインはHUGO HAL! これは買っちゃうでしょう、ねえ?
 

2003/02/14 素敵イベント


 ここ二三日、風邪をひきかけてる気配が猛烈にして怖かったんですが、気合と、早寝と、寝しなの杏露酒お湯割りと、葛根湯で撃退に成功。危ないところでした。今倒れるわけにはいかんのです。
 だって今週末は待ちに待った素敵なイベントがあるじゃありませんか。
 そう! TTTの先行上映!
 いよいよ明日です。もう楽しみで楽しみで仕方ありません。わーい。
 
 ……え、2月14日ってなんかありましたっけ?(不審げに)
 

 最近読んだ本のうち取りこぼしを二つばかり。
 
 ・桜庭一樹『赤×ピンク』ファミ通文庫,2003.2.5.(640円)
 
 高橋しんの表紙絵で目立っていたので、本屋で気になった人も多いんじゃないでしょうか。廃校の校舎に作られた非合法キャットファイトクラブで働く3人の女の子のお話です。これは面白かった。
 キャットファイトと言っても『美女で野獣』みたいに格闘アクション主体というわけではなく(作者自身空手をやるそうで、格闘技への愛は伝わってきますが)、風俗としてのキャットファイトのいかがわしさを踏まえた上で、そのいかがわしい場で生きざるを得ない女性たちを描くことにウェイトが置かれています。
 読みながら、なんだかとても「女性的な」小説であるという感じを受けました。ああ俺は女の人が書いた文章を読んでいるなあという、ほとんど皮膚感覚に近い印象で、どこからそんな印象が来てるのかはよくわからなかったんですが。
 しかしファミ通文庫でこういう小説が出るんだ……。侮りがたしエンターブレイン。
 あと、関係ないですが、第一章の冒頭にこんな文章があります。
わたしは生命力が弱い
生きることそのものに偏差値をつけたら
42ぐらいじゃないかと思うんだ
 42! いい数字じゃないですか!
 それはUltimate Answerですよ?
 
 
 ・二ノ宮知子『のだめカンタービレ #1〜#4』講談社コミックスキス,2002.1.11.〜(各巻390円)
 
 評判がよかったので試しに1・2巻だけ読んでみたら面白かったので、結局出てる分全部買ってしまいました。『動物のお医者さん』タイプの漫画ということになるんでしょうか、音大を舞台にした学生たちのお話です。
 指揮者志望のエリート音大生、千秋真一と、天性のというか野生的なピアノ弾き、野田恵(通称のだめ)の二人が主人公。高慢だけど努力家の千秋と、不思議系というかアレなのだめの掛け合いが楽しい、テンポのいい漫画です。一番の見所はやっぱりのだめの変人さでしょうか。人の弁当盗るし、風呂入んないし、奇声は発するし。でも手が大きくて難しいところを難なく弾きこなす女の子というのは、なんかいいと思うんですが! どうか!(どうもこうも)
 そういや、うちの父親も音大出で、しかも千秋と同じくピアノとバイオリンと指揮ができるんですよね。
 ちょっと読ませてみたくなりました。
 これも本筋とは関係ないですが、ときどき2ちゃん語がさりげなく出てくるのが可笑しい。

 ・小熊英二の新刊
 わ、出てたのか。『単一民族神話の起源』は面白いのでみんな読め。
 しかし、この人の本はなんでいっつもこんなに高いんだ。
 

2003/02/10 亜州水匪その他


 意図したわけではないですが、連続して似た系統の本を読んだので一気にご紹介。共通点はなんだろう、アジア沿岸?
 
 ・室伏哲郎『大追跡!現代の海賊』宝島社新書,2000.6.23.(690円)
 
 現代の海賊について知りたくて買ってみた本。東南アジアの事例についての記述が多いです。海域ごと(アフリカ、中南米、極東など)に襲撃スタイルが違うとか、中国が明らかに海賊シンジケートを庇護しているとか、面白いんですが、いかにも週刊誌的な書き方には読んでて苛々させられっぱなしでした。安っぽいお涙頂戴や憶測に溢れた、大学生のレポートみたいに脇が甘い文章なんだもの。現代の海賊についてざっと概要を頭に入れるにはそれなりに役立つでしょうけど、事実が面白いんだから、事実を書いて欲しかったです。資料を丸写ししたとおぼしい箇所が興味深いので、特に。
 
 ・宮崎学『アジア無頼 「幇」という生き方』徳間文庫,2001.5.15.(590円)
 
 実は初めての宮崎学。こちらの書評で興味を持って読んでみましたが、恐ろしく面白かった。幇の一員として迎えられた日本人、竹村英雄が、密輸組織の戦闘隊長として活躍するという展開は、まるで戦前の上海や満州を舞台にした冒険小説のようですが、この本の舞台はベトナム戦争真っ只中のインドシナ。しかも驚くべきことにノンフィクション! 著者が竹村から渡されたノート15冊分の手記を元にして書かれたというあたりからしてドラマティックですが、内容は更にものすごいです。特に第三章、ポルポト派に家族を殺された竹村が、カンボジア軍すべてを皆殺しにしようと復讐戦を仕掛けるくだりは壮絶。また、「日本人の中国マフィア認識は間違っている」と題された前書きも含めて、幇とはどういうものなのかということを踏み込んで書いていて刺激的です。強くオススメ。エピソードの強烈さにちょっと呆然としてしまう本です。
 
 ・ジェイムズ・H・コッブ『ステルス艦カニンガムIII 攻撃目標を殲滅せよ』
  伏見威蕃訳,文春文庫,2002.10.10.(上下巻とも581円)

 
 近未来海戦小説、カニンガムシリーズの4冊目。アマンダ・ギャレット率いるシーファイター・タスク・フォースは、ミサイル駆逐艦から対地攻撃巡洋艦となったカニンガム、ドック型輸送揚陸艦カールソンをはじめとする各種部隊を擁するミニチュア海・陸・空軍に変貌を遂げています。今度の敵はインドネシアの海賊王。上で紹介した海賊の本を読んでいたのはたいへんタイムリーだったと言えます。この海賊王が魅力的な人物で、実際アマンダといい仲になってしまいます。あれあれ。
 そんなこんなで、わりとラブったりコメったりしている今回。われらが情報士官、クリティーン・レンディーノもやることやってますし、マッキンタイア提督もなんか若返ってます。何やってんだあんたら(笑)
 戦闘描写はいつもの通り達者です。米軍なので使えるリソースは豊富だし、実際使い倒しているんですが、登場人物が頭を絞って戦っているので、金持ちっぷりがそれほど嫌味じゃないのがこのシリーズのいいところでしょうか。今回も宿敵に恋してしまうというアマンダの葛藤が効いていて、楽しく読めました。もうちょっと悩んでほしかったかな、とは思いましたが、この終わり方なら、これはこれで。
 
 
 ・林譲治『帝国海軍ガルダ島狩竜隊』学研ウルフ・ノベルス,2003.1.20.(800円)
 
 学研が最近作った怪しげな新書レーベルから出た恐竜SF。舞台はラバウルとトラック諸島の真ん中くらいにあるガルダ島。太平洋戦争中、飛行場を建設しに来た帝国海軍設営隊ですが、戦況の悪化で補給が来なくて立ち往生。このままじゃ餓死するので、仕方なく島内で開墾したり狩猟採集してるうちに次元通廊を発見。入ってみたら恐竜のいる異世界でした。なんだあのでかい生き物は!? 食い物だ!
 ……なんて貧乏くさい話なんでしょう。カニンガムの次に読んだから、あまりの落差に笑ってしまいました。
 著者がハードSFの人なので、次元通廊を抜けた先の異世界の物理学的描写がユニークだったりしますが、すごいアクションがあるわけでもなく、お話としてはとても淡々としています。恐竜の描写は『恐竜学最前線』や『ディノプレス』を読んでいたのだな、という感じ。そしてBCF派です。
 うーん、この設定ならもっと面白くなるだろうに。アイデア優先で、物語的な盛り上がりには興味ないのかもしれませんが、どうにも勿体無く感じてしまいました。
 
 

2003/02/09 恥ずかしながら帰ってまいりました。


 グアムじゃなくてサイパンでございますが。
 
 結局持っていった本は、『ステルス艦カニンガムIII 攻撃目標を殲滅せよ』でした。一応海ものということで。
 んで、旅行ですが。たいへん面白かったです。もうびっくりするほど楽しんでしまいました。はっきり言ってなんにもない島なんですけども。退屈するかと思いきや、ダイビングしたりビーチでだらだらしたり魚にソーセージ食わせたりと、絵に描いたような観光客マニューバをこなすだけで充分でした。堕落だ。
 中でもダイビングが面白くてですね。あれほど簡単に異世界感が味わえる娯楽があるとは思わなんだ。海、ほんとにきれいだし。病み付きになる人がいるのもわかります。ていうかまたやりたいです、自分が。
 ちなみに、日本でペーパーの講習、現地でプールと海の実習というコースで、ライセンスを取得するのに要した時間は、正味わずか1日半でした。まったく簡単だ。
 今回のサイパン行きは社員旅行で、ダイビングのライセンス取得は社長命令だったんですが、サイパンもダイビングも、こんな機会でもなければ縁がなかったでしょうね。何でもやってみるもんだなあ、と思いました。
 
 それはそれとして、知らない土地に行ったら本屋に行くのが鉄則ですが、サイパンに本屋は一軒しかありません。その名もBestseller Bookstore。一軒しかないんだから、確かに看板に偽りはない。ススペのジョーテン・ショッピングセンターというスーパーの表にある小さな店です。サイパンは日本語しかできなくてもそんなに困らないですが、ここの本は見たところ全部英語。お店の規模と比較すると"Sci-Fi & Fantasy" と "Horror"の棚が広く、島にSF読みがそれなりにいることが窺えました。また、雑誌のコーナーにはInquestなんかと一緒にDungeon誌の最新号が3〜4冊面陳されていましたし、Sci-Fi & Fantasyの棚にはD&D3EやMagicの小説に混ざって、"Monster Manual II"と"Book of Vile Darkness"が。どうやらゲーマーもいるようです。苦労してんだろうな、田舎のゲーマー。がんばれー(田舎のゲーマーに対する共感)
 新刊本屋なので、特にここで買わなきゃならないようなものもなかったんですが、折角なのでペーパーバックを3冊ばかり買って帰りました。クライヴ・バーカーの"The Thief of Always"バーカー自身の挿絵がいっぱい)、グレッグ・ベアの"Dinosaur Summer"(ディターリッジ先生の挿絵がいっぱい)、それに以前SFマガジンで紹介されてたような気がするPeter Wattsの"Starfish"。
 どれも面白そうです。問題は英語だということで。
 通勤電車の中とかで強引に読まないと終わんないな。頑張ろう。
 
 
 おまけ:今日の珍奇な検索語句
 
 ・その1
 ・その2
 
 前者はともかく、後者の突飛さは特筆すべきものが。
 (5分後追記)
 ……と思ったら、動物型チョコレートにZoologyってのがあるのね。ナルホド。時節柄ちっともおかしくありませんでした。
 

2003/02/05 南の島へ


 自分でも信じられないのですが明日からサイパンに行ってきます。日曜まで。会社に泊り込んでひいひい言ってた数日前までとあまりにも状況が違うので、まったく現実感がありません。海外行くの初めてなんだけど、こんなんで大丈夫だろうか。
 ……とりあえず、道中読む本でも選んどこう。
 今日買ってきた『阿修羅ガール』と『帝国海軍ガルダ島狩竜隊』にしようかな。
 んではまた。行ってきます。
 
 

2003/02/03 The Stars My Destination


 わー、帰れたー。
 
 仕事もなんとか山場は越えたかな?
 
 帰宅途上、深夜の静かな住宅街を歩いてると星がたいそう綺麗でな。夜空を見上げながらてこてこ歩いてて思ったんだけど、コロンビアのクルーのような死に方は、宇宙を目指す人間の最後としては最高級といってもいいんじゃなかろうかと。無念には違いないとはいえ、宇宙飛行士たる者がミッション中の死を覚悟していないわけはないし、離陸ではなく帰還シーケンスでの事故ということで、少なくとも宇宙には行ってきたわけだし。それに、時速二万キロで惑星大気の壁に突っ込み、凄まじい空力に耐え切れず崩壊する機体と共に、ほんの一瞬でばらばらに吹き飛ばされるという情景には、人間のささやかな努力など一顧だにしない、神話的といってもいい巨大な力を感じて、正直嬉しくなってしまう。二重にぞくぞくするのは、まさにその巨大な力に対して、真っ向から勝負を挑む人間たちがいるという事実だ。さてここで我が身を省みると、のんきに冥福なんぞ祈ってる場合ではない。あれだけ壮絶な最後を見せてくれたライトスタッフたちに対して、たださめざめとお悔やみを述べるだけなんて、それはあまりにも悲しすぎるし、何より失礼この上ないのではないか。
 
 ついでに言うと、今回の事故は確かに宇宙開発にとって痛手ではありますが、チャレンジャーのときほどの遅延はないんじゃないでしょか。今のアメリカの宇宙開発には、何年も打ち上げを止められるほどの余裕はありません。もしちょっとでも長く足を止めようものなら、中国が、インドが、次々と下から迫ってくるでしょう。アメリカが軌道を抑えられるような危険を冒すとは思えません。ただ、軍事用はともかく、民間の打ち上げは厳しくなるかもね。
 
 
 ・ばらスィー『苺ましまろ Volume 1』メディアワークス,2003.2.15.(550円)
 
 わー。ゆるーい。
 このゆるさはなんていうかすばらしい。すっかり気に入ってしまいました。
 やっぱりお姉ちゃんと茉莉でしょうか。ほんのり百合っぽいしー。わー。
 (方向性を模索した結果がこれか)
 
 
 
 ・宇宙作家クラブ ニュース掲示板……まあ大体ここ見ときゃいいんでないかと。
 
 ・ばらスィーの画像置き場……こんな絵よ。
 
 以下小ネタというか覚え書きというか。
 
 ・安井誠太郎サイト……あったのかー。
 
 ・多言語文字変換屋……イケダさん向け(私信)
 
 ・奇妙な進化を遂げた宇宙船の中の恐竜たち……この程度のフレーバーに燃えてしまうのはどうかと思うんだけども、今までのシリーズの中では一番やりたくなったよ。どうしよう(どうもするな)
 
 

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