Spirits
Under the World Tree

 アンブラには数多くの精霊が棲む。精霊は血と肉に縛られない生(なま)の魂であり、特定のレルムに関係しているものもいるが、その多くはアンブラに特有で、物理的な言葉で語ることは難しい。
 精霊の世界は明確な階層構造を成し、下位の精霊は上位の精霊から分離するか、あるいは作り出される。この関係における上位の精霊はパトロン(Patron)と呼ばれる。ほとんどの精霊はパトロンを有するが、ガルーは体系から外れたはぐれ精霊がいるのではないかと考えている。
 最も偉大な精霊はガイアであり、その下にワイルド・ウィーバー・ワームのトライアット(始源の三者)が位置する。トライアットの下は大精霊神であるセレスティン。その下は精霊の諸侯たるインカルナ。ジャグリングやガフリングは、それに使える騎士や召使のような立場である。

Gaia
 アンブラのレルム・システムは、ガイアに始まりガイアに終わる。大千世界のすべてはガイアに帰属するが、邪悪なものをガイアの一部とは認めたがらないガルーもいる。ガイアの成長と発展は、彼女の中の生命の成長と発展に深く結びついている。ガイアは創造物のすべてを愛し、すべてを無条件に受け入れる。生命はガイアの顕現であり、誉れでもある。死もまたガイアのエネルギーの変転であり、死者は新たな生と死のサイクルに組み込まれる。しかし、このサイクルが乱れることでガイアの力は弱まっている。いまなお進行中の、トライアットのバランスの崩壊も彼女を酷く痛めつけている。ガルーはウィーバーとワームのガイアへの反逆に怒り、ガイア防衛に心血を注ぐと同時に、近付きつつある黙示録が、ガイアの完全な破滅のしるしではないかと恐れてもいる。

The Triat
 ガイアの下に位置するのは、ワイルド、ウィーバー、ワームとして擬人化される宇宙の三つの力、トライアットである。この三つの力は、創造と成長と破壊、可能性と組成と分解、混沌と秩序と均衡を司っている。

The Wyld
 ワイルドは創造者であり、可能性そのものである。一匹の蟻にも、一本の樹にも、ワイルドのかけらである可能性の混沌が含まれている。ワイルドがいなければ、そもそもガイアは生まれることすらできなかっただろう。
 ワイルドは絶えず何かを生み出し続けるが、ウィーバーがいなければ創造物のすべてをすぐさま失ってしまう。何かが生まれても、間髪を置かずに元の混沌の炉の中へ溶け込んでしまうのである。このためワイルドは、トライアットの中で最も擬人化されていない存在になっている。ウィーバーの網を選んで壊し、再び混沌へと戻す役割を持つワームもまたワイルドにとっては重要である。
 ディープアンブラにおいては、制限のない可能性というワイルドの力はトライアットでも最強であり、ほとんどガイアにさえ匹敵する。しかし物質世界では、人間の拠って立つ「理論」や「理性」のために、ワイルドの力は非常に限られた弱いものになってしまう。理論の働く世界では魔法の生き残る余地はないのだ。物質世界に僅かに残る、純粋なワイルドのエネルギーを引き出せる場所を、ガルーは懸命に護ろうとしている。しかし物質世界では弱くとも、ディープアンブラにおいてワイルドの敵はいない。ワイルドを攻撃しようとするものは皆、原形質に戻されてしまうのである。
 ガルーは黙示録への闘いの、また輝ける日々のシンボルとして、ワイルドを敬っている。ワイルドのレルムは多彩な生命で溢れ、どんなことでも起こり得る。弱体化したガルーがガイアの敵を打ち負かすことさえ可能かもしれない。ワイルドは世界の熱死を食い止める光り輝く希望なのである。
 その測り難い力と直接触れることは叶わないまでも、ワイルドはガルーとガイアの最大の同盟者といえるだろう。

The Weaver
 トライアットの二番目、ウィーバーは、ワイルドの創造物が生まれ落ちたところを拾い上げ、瞬時に混沌の坩堝へと還るのを食い止める位置に収まった。こうして識別された創造物は構造化され、形を持った。これが、後にパターン・ウェブ(Pattern Web)と呼ばれる宇宙の織物の、最初の糸だった。
 これはすべてを変えた。形が生まれ、成長と発展が起こった。意味が生まれ、無限の混沌は、形ある永遠となった。そこにワームが生まれ、ウィーバーの網を刈り込み始めた。網はもはや完全ではなくなったが、バランスは取れた。これが、混沌、想像、破壊という、ガルーの考える真の宇宙のサイクルであった。そしてその均衡は、ウィーバーが意識を持つようになって永遠に失われた。
 何が起こったのかには諸説ある。一説によれば、ウィーバーが世界のすべてを網に取り込んでしまおうとしたのだという。ワイルドのすべてをパターンに絡め取ろうと試み、それが創造物の爆発的な誕生を引き起こした。これによってウィーバーは狂気に陥り、ワームは無数の創造物に埋め尽くされた。均衡を保とうとしたワームもまた暴走し、創造物を破壊し続けながら今もウィーバーの網から抜け出そうとしているのだと。
 また、ウィーバーの狂気は力への渇望だけであり、彼女はもっと計算高いと考える者もいる。つまり、大千世界における自身の基盤を確立し、論理的進化を遂げようとしているのだと。この説によれば、己の因果関係を全てに適用しようとするウィーバーにとっては、自分の因果で破壊を続けるワームは障害に他ならない。だからウィーバーはワームを罠にかけて網に絡め取り、破壊の方向をウィーバーの因果に沿うように変えた。しかし彼女の支配も絶対ではない。パターンを逸脱したワームの盲目的な破壊のために、ウィーバーの力は制限され、同時に(ウィーバーのように有利な位置にいない)ガイアを傷つける結果になっている。
 グラス・ウォーカーズのようなガルーはこれに異議を唱えている。それによれば、ワームこそが諸悪の根源である。破壊するものをなくしてしまえば勝利することができると考え、ワイルドを完全に破壊してしまおうとしたワームは、まずウィーバーを用いてワイルドを絡め取ろうとした。しかし無限を縛ることのできなかったウィーバーは発狂し、自分自身を狂気の網に絡め取ってしまった。ワームも自分の仕掛けた罠に嵌まり込み、そして今に至っている。その間にワイルドは永遠不変の存在となった。グラス・ウォーカーズによれば、ウィーバーは自分の身を守ろうとしているだけであり、ワームを止める鍵を握っているという。
 正確なことは誰にも判らない。知っているのは当のトライアットだけだろう。
 トライアットの中で最初に知性を獲得したのがウィーバーであることには、ほとんどのガルーが同意する。それが狂気の元になったのか、狂気の副産物だったのかはともかくとして。
 現在ではウィーバーの力は強い。かつてのパターンとカオスの均衡は、停滞と腐敗に取って代わられた。彼女が蜘蛛の巣を完全に織り終えたら、宇宙の全ては、固く、動きも変化もないものになるだろう。

The Wyrm
 トライアットの最後がワームである。かつてワームは均衡を司る存在だった。ウィーバーの秩序とワイルドの混沌のどちらが勝ることもないように、世界に調和をもたらしていた。混沌と、その上に張られたパターン・ウェブとの間を自由に行き来し、調和を乱すものを排除していた。
 しかしパターン・ウェブに囚われたワームは、ウィーバーの狂気を覗き込むことで、意識を得ると同時にウィーバーの死の黙示録ゲームに巻き込まれることとなった。ワームは三つの人格に分裂し、お互いの行動の調和を取ることも難しくなった。
 調和をもたらす存在であったワームは今や、黙示録の先触れ、エントロピーと腐敗と穢れの根源となった。外側から堂々と破壊することができなくなったために、ワームは対象の内側から破壊するようになった。憎悪と嫉妬の誘惑に屈する、あらゆる弱い魂を。
 ワームはウィーバーを操ってワイルドを絡め取り、然る後に全ての創造物を存分に破壊しようとしたのだと考える者もいる。しかしそうだとしても、今やワームは自分の仕掛けた罠にかかり、強欲の代償を支払う羽目になっている。
 ワームは汚染に屈する様々な弱い存在と出会い、遂には数多くの下僕を有するようにまでなった。すべてを侵してゆくその腐敗によって、ワームは知的生命の精神の暗い側面に囁きかけることができるのである。ワームは幾つものレルムを次々に手中に収めてゆき、その病弊は物質世界と精霊世界の両方に広がっている。
 ガルーと精霊の探検家たちは、ワームのレルムへと旅をしている。そこは盲目的な破壊がガイアを放逐し、最悪のベインやインカルナの奴隷ばかりが棲む世界だった。もしワームが勝利すれば、世界の全てが同じようになるだろう――全てが破壊し尽くされるまでは。
 
Celestines
 トーテムポールにおいてトライアットの下に来るのがセレスティンである。最も偉大なセレスティンは、月の精霊ルナ(Luna)と太陽の精霊ヘリオス(Helios)の二柱。ガイアのもっとも直接的かつ広範な顕現は、セレスティンを通してのものである。ガイアの真の姿はトライアットよりも遥かに巨大で、神秘的な存在と繋がることによる法悦境にでも到達しなければすべてを知覚することはできない。他のセレスティンは、自意識と高度な知性を有する、トライアットの強力な忠臣だが、その姿はガルーにはほとんど知られていない。自分の作ったレルムに全知全能の存在として腰を据え、そこを訪れるのもインカルナばかりである。
 ガルーとコミュニケートするとき、セレスティンは自分の化身(Avatar)を送ることがある。化身はガルーにも理解可能な姿を取る。セレスティンの真の姿は想像もつかないもので、下位の存在は化身を通してしかセレスティンと関わることができない。
 化身を作るとき、セレスティンは自分の限られた部分を限られた形で顕現させる。しかしセレスティンはほぼ無限に等しい存在なので、多数の化身を一度に行動させることも可能である。セレスティンより力の弱い存在は、どのような手段を用いても、化身を破壊することも影響を与えることもできない。
 
Incarna
 インカルナはセレスティンに仕える僕、配偶者、助言者、戦士であり、仕えるパトロンにパワーを貰って生きる。ほとんどの場合はセレスティンに作ってもらったドメインに棲むが、自分で作ったドメインに居を定めるものもいる。セレスティンが滅びたときもインカルナは生き延びることが多い。インカルナはGnosisと自分の目的の両方を追い求めており、多くはセレスティンになりたがっている。
 最もガルーに馴染みの深いインカルナは、トーテム精霊だろう。トーテムは多くの化身を作り出してガルーと接触する。パック・トーテムはトーテムの化身の一例であり、ジャグリングの姿と能力を持つ。
 セレスティンより劣るとはいえ、インカルナも充分に強力である。通常、インカルナと関わることができるのは化身を通してのみだが、サージたちは、アンブラを旅してインカルナその人に出会った偉大な見者たちの伝説を語り伝えている。
 
Jagglings
 ジャグリングはインカルナに、または直接セレスティンに仕える単純な精霊である。パトロンの精霊のエッセンスから創造され、通常極めて忠実である。自由意志を獲得した(あるいは与えられた)者もおり、中にはこのプロセスを真似て、自分に仕えるガフリングを創造するジャグリングも存在する。ガルーはしばしばジャグリングと接触することになる。ジャグリングはギフトを教えてくれたり、エングリング(Engling)などは氏族全体にGnosisを与えてくれたりする。
 
Gafflings
 ガフリングは最下等の精霊で、半知性か、あるいは知性を持たない存在である。使役者やインカルナの道具として使われ、知性を持つものとしては扱われない。ガルーのフェティッシュに封じられたり、アンブラの中のメッセンジャーとして使役されるのもガフリングである。ガフリングはパトロンとの一定の接触を保ち続け、自分の全権を掌握されることを許している。ほとんどのガフリングは、パトロンに支配されることで一体感を得る。完全な知性を持つガフリングは例外的な存在で、何らかの高次の神秘的な力が働いたことを示唆する。ギフトを教わったり、フェティッシュに封印したりと、ガルーが最も頻繁に接する精霊がガフリングである。
 
Fetishes
 フェティッシュは中に精霊のエッセンスを含んだ物品である。封印された精霊は、使用者によって必要なときにその力を呼び起こされる。フェティッシュの魔力は、封じられている精霊によって異なる。
 通常、フェティッシュは木や粘土などの自然の材料で作られる。ただしグラス・ウォーカーズのフェティッシュなどには、テクノロジカルな材料が使われることが多い。フェティッシュの多くは手に持つことのできるサイズで、封じられた精霊を表わす鳥の羽根、ビーズ、組み紐や打ち紐、彫刻などで装飾されている。槍やナイフなどの武器の場合もある。
 大千世界の精霊の多彩さを反映して、フェティッシュの魔力もまた多種多彩である。精霊のエッセンスを含むため、全てのフェティッシュはガルーにとっては神聖な品である。そのため、フェティッシュは大きな注意と尊敬をもって扱われる。ワームの手先はこうしたフェティッシュを盗んでは壊し、あるいは自分たちの恐ろしいフェティッシュを作っている。
 フェティッシュは「呪物の儀式(Rite of the Fetish)」によって作成される。通常、フェティッシュ作成には自主的な精霊の協力が必要とされる。しかし中には、精霊の意思を無視して無理矢理封印したフェティッシュもある。こうしたフェティッシュは非常に反抗的で、ガルーはこれを「呪われた」フェティッシュとして見なしている。
 フェティッシュの使用に当たっては、キャラクターはまずGnosisの判定でフェティッシュを「調律」しなければならない。調律によって、フェティッシュと所有者の間には精神的な絆が結ばれる。所有者は、フェティッシュが大千世界のどこにあろうとも即座に手に取ることが可能になり、フェティッシュの魔力についての知識を共感的に得る。判定の難易度はフェティッシュのGnosisで、1個でも成功すれば調律は完了する。全く成功しなければ、キャラクターはそのフェティッシュを使うことはおろか、もう一度調律を試みることすらできない。封じられた精霊に所有者たる資格があることを証明する機会を与えるかどうかは、ストーリーテラーにかかっている。
 所有するフェティッシュを実際に使用する場合にも、所有者はGnosisの判定によってフェティッシュの魔力を「活性化」しなければならない。代わりにGnosisを1消費して、自動的に活性化に成功するという選択もできる。
 ある特定のフェティッシュやタレンを作成するときには、適切な精霊を封じなければならない。例えば癒しの精霊は、ファング・ダガーやベイン・アローには明らかに不向きである。戦争や苦痛、死の精霊が相応しい。またフェティッシュに封じる精霊は、ほとんどの場合ガフリングである。
 
Talens
 タレンの作成はフェティッシュよりはずっと簡単で、サージではない者にも可能である。精霊が封じられた品物で、活性化にGnosisの判定が必要である(ただし調律の判定は必要ない)など、タレンはフェティッシュによく似ているが、最大の違いは1回しか使用できないということである。一度使用したタレンの精霊はアンブラへと帰り、材料は再び魔力を失う。またタレンは調律が必要ないため、活性化さえすれば誰にでも(ガルーではなくても)使用できる。作成には「束縛の儀式(Rite of the Binding)」を執り行ない、精霊戦闘で打ち負かした精霊を、命を助けるのと引き換えにむりやり封じてしまう。封印が一時的なものなので、これは悪いこととは見なされない。
 タレンのGnosisは封じられた精霊の数値と等しい。束縛の儀式の成功数につき1つ、同じタイプのタレンを作ることができる。例えば3成功で4本のベイン・アローができることになる。多くの場合、タレンはガフリングを封じて作られるが、より強力な精霊を封じることで、簡単に多数のタレンを作ることもできる。こうした場合、通常の判定の成功数に加えて、2〜3成功が自動的に得られる。封印している時間の制限はないが、一度使えばなくなることを忘れないように。
 


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