Story 7:Balkan Phalanx
 
 登場NPC:
・ガルー20名
ダークサン(ランク4 フィロドクス)
ネヴァモア(ランク3 サージ)
バクファルク(ランク2 アールーン)
T-34(ランク2 アールーン)
他シャドウロード×16

・キンフォーク10名
ナターシャ
他9名
 
クラッシング・ブーン・ブーン
サイバー・ドッグス
 
ヴォズド
 
 展開:
 世界の縁の滝から押し流された一行は、星空を落ちてゆく。虚空の中にちらりとミール宇宙ステーションが見えたかと思うと、恐ろしいスピードでそばをかすめてそのまま上方へと消えた。やがて下に見えてきたのは地球である。丸い地表は近付くにつれて、地図を広げるように徐々に拡大される。落下地点は、ユーラシア大陸西方。ヨーロッパ、バルカン半島。雲の上を旋回する影に気付いて見てみると、それはブーメランに似た黒い全翼機だ。B-2ステルス爆撃機?
 そこまで見たとき、ロンがゴーントレットとの摩擦で(また)燃えだした(*1)。炎を照り返した雲が夕焼けのように染まる。それを突き抜けて一行は落ち続け、不意にどさりと地面に投げ出された。枯れ木のまばらに生えた荒涼とした場所である。打ち身を撫でさすりつつ起き上がると、荒野の向こうから、無数の人間が行進する足音が近付いてきた。
 見えてきたのは凄惨な隊列だった。破れた鎧、折れた剣、爆発で吹っ飛んだ手足。歴史を通じて数え切れない争いの舞台となってきたこのバルカン半島で死んだ兵士たちが、死の行進を続けているのだ。死体となった彼らが行くのは死者の世界、シャドウワールド。バルカン半島のペナンブラはシャドウワールドと重なり合った異常な様相を呈しており、現世に近いこんな場所でも死者の姿が見られるのである。
 戦死者のデスマーチの向こうに、見覚えのある影があった。首のないガルー――イエロー・ペリル。こちらに背を向けたペリルは、誘うように丘の影へ、ゴーントレットの向こうに姿を消した。一行は死者を掻き分けて(*2)後を追うが、ゴーントレットを抜けるのに手間取って相手を見失ってしまう。
 物質世界に入ってみると、そこは廃墟と化した市街だった。旧ユーゴスラヴィア。かつて美しかった街も今は瓦礫の山だ。黒雲に覆い尽くされた空では、絶え間なく遠雷が鳴り響いている。人の気配はまったくない。擱坐して焼け爛れた戦車が力なく砲塔を垂れ、砲撃で半壊した家の窓辺では、場違いに無傷の鉢植えが一つだけ、ぽつりと赤く花を咲かせていた。
 当てもなく歩いていると、廃墟の暗い戸口の一つから誰かが姿を見せた。スーツ姿の白人男性。ホルスターには大口径のグリズリー・ウィン・マグ。ピョートルの上司、シャドウロードのバクファルクだった。
 バクファルクとピョートルは再開を祝して抱擁し合い、互いの頬にキスする。
「ようこそ、ピョートル・アレクセイエヴィチ・ミシェロヴィッチ。すべてのシャドウロードの故郷たる、このバルカン半島へよく戻った」
「これはお久し振りです、バクファルク。お健やかそうで何よりです。ところで、貴方はなぜここへ?」
「お前を歓迎するために出向いてきた。噂は聞いているぞ。お前の活躍ぶりは、ロードの中でも高く評価されるだろう」
 ロンが密かに唾を吐いた。茶番だ。誰もがそう感じている中、二人のシャドウロードはまるで親しい友人同士のように振る舞い続ける。
 近くにロードのキャンプがあるといい、バクファルクは一行を招待する。断るという選択肢は存在しない。足取りも重く一行は歩き出す。多少なりとも嬉しそうに見えるのはピョートルだけだが、さて、内心はどうか――
 これから向かうキャンプは、民族紛争による荒廃で見捨てられた街を占領し、ロードの拠点としているものだという。バクファルクは妙に上機嫌だった。
「近隣の人間たちは魔物を恐れて近付こうとせん。廃墟の中にはよく訓練されたキンフォークの狙撃兵を何人も配置しているしな」
 それを聞いて、急に周囲の建物の窓が気になり出す一行。
 遠く、飛行機の爆音が聞こえてきた。バクファルクの顔から笑みが消える。立ち止まって耳を傾けるその様子には、明らかな緊張が見て取れた。爆音は近付くことなく再び遠ざかり、バクファルクは何事もなかったかのようにまた歩き出した。
 キャンプは広場を取り巻く半壊した建物の一群だった。軍装のシャドウロードたちの鋭い視線が痛いほど突き刺さってくる。その周囲で怯えた目を向けてくるのは、ロードに従属するキンフォークたちだ。ぴりぴりした雰囲気は手で触れられそうなくらいだ。総合してロードは20名、キンフォークは見える限りで10名というところか。中でも目立つのは3人。キャンプのリーダーと思しい、黒い太陽のピクトグラムとグランドクレイブを誇らしげに身に着けた男<ダークサン>、肩に大鴉を止まらせた女<ネヴァモア>、影のように黒いクロークに体を包んだ女<T-34>である。これにバクファルクを加えた4人がキャンプの実質的なリーダーのようだ。
 ここで一行は、キャンプの外れに大きな半地下の建物があることに気付くが、そのことに触れるとバクファルクは言葉を濁す。「……あれは……そう、キンフォークの宿舎だ」
 案内された部屋にはばっちり盗聴機が仕掛けられており、げんなりする一行。ピョートルはワッパーを外に連れ出し、リタニー破りの件を絶対に漏らさぬよう、囁き声で釘をさす。公になれば自分のアルファとしての指導力が問われることになるからである。ワッパーは従順極まりなく、タイコモチ街道まっしぐらといったご様子。
 その夜は歓迎のムートが開かれた。酒瓶が座を回り、焚火の撥ねる音が歌声と談笑に入り混じる。しかし誰一人本当に酔う者はいない。笑い声は上がっても、目は笑っていない。月さえ隠す黒雲の上、鳴り止まぬ遠雷が臓腑を震わせる。これはシャドウロードのキャンプ、シャドウロードのムートであった。
 だが、その重圧に圧倒されない者もいた。ピョートルとシェナンドーである。宴も盛り上がったところで、二人は儀式的な挑戦を申し込む。ピョートルはT-34に、シェナンドーはバクファルクに。関係が悪化したときに備え、実力を測るためである(*3)。T-34が着ているのがレベル2の武器隠蔽フェティッシュ、闇の外套(Cloak of Darkness、シャドウロード・トライブブック所収)であると見たピョートルは、どんな武器を隠しているのか知ろうと攻撃を掛ける。しかしT-34のガードは硬い。「はいはい、負けた。強い強い」などと適当にあしらわれてムカつくアルファ。結局装備は判らずじまいだった。一方のシェナンドーは、バクファルクをカイリンドーで難なく投げ飛ばし、憤怒の形相で起き上がるバクファルクを制するように丁寧に一礼。さっさと儀式戦闘を終わらせてしまう。確実に狡猾さが増してきているようだ。
 ムート後、ピョートルはバクファルクに呼び出しを食らい、玉座のダークサンの元へ。脇に控えるネヴァモアはともかく、部屋の中にT-34の姿が見えないのが不気味である。ダークサンは言う。「地図を巡るこれまでの旅、ご苦労だった。今やこの地図は様々な勢力の関心を引いている。それをうまく捌き切るのは、位階の低いお前たちにはまだ荷が重いと言わざるを得ない。そこで、これからは我らが地図を引き継ごう。これまでの働きには充分に名誉と褒美が与えられるだろう。――地図を渡してくれるな」
 ピョートルは頭を素早く回転させ、なんとかその場での返答を回避。神聖なクエストを最後まで達成するつもりだったし、部下と相談する時間が欲しいと言って退出する。部屋の扉が背中で閉まった途端、猛ダッシュ。監視機器を警戒しながら深夜の作戦会議を招集する。
 しばしの議論の後、ロンは何を考えたか、バクファルクの部屋に赴く。スナフクの同行の申し出を、できたら一人で行きたいと言って断るロンに不審を抱き、こっそりついていったシェナンドーは、扉の隙間から見ていて驚愕する。部屋の中でしなを作ってバクファルクを誘惑しようとするのは、紛れもないロンの姿。なんと、ロンは女だったのだ(*4)。
 だが結局、誘惑は失敗気味。困惑するバクファルクを置いて部屋を出たロンは、ドアの前でシェナンドーとばったり顔を合わせる。口をあんぐりと開けたまま固まっている狼に微笑みかけて、ロンはその場を去っていく。
 ワッパーは一行の世話を命じられたキンフォークのナターシャに迫り、優しさを前面に押し出しつつ、体を張って情報収集。ナターシャ曰く、キャンプのそばの半地下の建物は宿舎などではなく、時折無気味な声が聞こえるとのこと。またダークサン、ネヴァモア、T-34の結束は固いが、後からやって来たバクファルクとの間にはやや意志の疎通に温度差が見られるらしいことも判明した。
 バクファルクの部屋から戻ったロンは、自分の端末から衛星回線を経由してグラス・ウォーカーズのネットに接続。チャットとハッキングの並行作業でバルカン半島の情勢を調査する。どうやら現在ヨーロッパでは、サイバー化を積極的に推進するキャンプである“接続された犬”(Cyber Dogs)に先導されたグラス・ウォーカーズが、マルグレイブ・ユーリ・コニェッツコ率いるシャドウロードと戦争状態にあるらしい。続いてロンは米国防総省のコンピュータに侵入し、B-2ステルス爆撃機についての情報を集めようとするが、判ったのは意外な事実だった。目撃に該当する形状のステルス機は一種類しかない。ノースロップ=グラマン・B-2スピリット戦略爆撃機。だが、この機種はあまりに高価であるため、全部で21機しか生産されておらず、その全ての所在は米軍によって厳重に管理・把握されている。このキャンプの上空を飛んでいる黒い全翼機は、B-2では有り得ない。では――あれは一体何だ。
 そのとき、ウォーカーズのチャットで名無しの参加者の発言があった。ステルス爆撃機の姿をした戦争のトーテムが存在するというのだ。その名はクラッシング・ブーン・ブーン(Clashing Boom Boom、グラスウォーカーズ・トライブブック所収)。
 この情報を受けて、一行の行動計画は大幅に変更された。ロンは精霊語を喋れるワッパーを連れて、フライトパックで密かに飛び立ち、雲の上でクラッシング・ブーン・ブーンとの接触を果たす。サイバー・ドッグスの要請を受けて召喚された彼女は、地上のキャンプの様子を偵察して情報を送信してきたという。彼女によれば、キャンプ外れの半地下の建物からはワームの強い力が発散されている。その上、ダークサン配下の20人は“ニドホッグの会”のメンバーである。
「ニドホッグの会だって !?」
「知っているのかワッパー!」

◆ ◆ ◆
●The Society of Nidhogg(ニドホッグの会)
 このキャンプのものたちは、天候そして闇に関する魔術を研鑽することで、グランドファーザー・サンダーと強く通じ合っています。しかし、狂信的な情熱は、陽光そのものが、グランドファーザー・サンダーの力を阻む障害になっていると考えるようになりました。究極的には、世界を永遠に暗黒で包みこむことを目指しています。サバトのバンパイアに属するラゾンブラ氏族のバンパイアと通じているという噂もあります。
(解説:いわおはじめさん)
◆ ◆ ◆
 
「わー、いわおさんだ!」
「ありがとう、いわおさん、ありがとう!」
 口々に感謝の意を表する一行であった(*5)。
 それはさておき、
「ロンよ、我が翼の使者となりて地表に降り、ニドホッグの会を撃滅する意志はあるか」 
 トーテムは人ならぬものの声で問う。
「その意あらば、近接航空支援を行なうも吝かではない」
 ロンはこの申し出を謹んで受けた。クラッシング・ブーン・ブーンはロンのトーテムになった。
 一夜明けて、一行は再び作戦会議を開く。ピョートルとロンは衛星回線でニューヨークに電話をかけまくる。NYのロードの頭目であるシルヴァン・イヴァノヴィッチ・シルヴァンと、同じくウォーカーズのリーダーであるクレオン・ウィンストンに、ニドホッグの会とことを構える許可を求めるためである。バルカンでの抗争に介入するということは、ぶつかり合う二つの部族という巨大な戦争機械に頭を突っ込むということである。少しは根回ししておかなければ、後に責任を問われねない。二人は首尾よく上司の言質を取った。
 こうして方針は固まった。ダークサン以下20名のロードを殺し、このキャンプを壊滅させるのだ。
 ピョートルはシルヴァン=シルヴァンからバクファルク排除の許可を得て大喜びである。かつて.44口径で膝を打ち抜かれ、血塗れになって奴の前に這った屈辱、忘れてはいない。相談の結果、近接航空支援は午後1時に要請することになった。トーテムと直通の無線機(*6)で、ロンはクラッシング・ブーン・ブーンに連絡を取る。爆撃の件と共に、キャンプ周辺のゴーントレットをウィーバーのリアリティ硬化能力でがちがちに固くしておくように要請。これはワッパーの発案である。
 ワッパーはナターシャを呼び、1時から危険になるから、他のキンフォークと一緒にどこかへ隠れるようにと言い含める(*7)。ナターシャの目がきらりと光った。「1時ね。わかったわ」小走りに去ろうとするナターシャに、ようやくワッパーも事態のまずさに気付いた。彼女はスパイとして送り込まれていたのだ! ワッパーは慌てて引き止め工作に走り、何とか説得に成功。情報の漏洩は免れた。
 時刻は正午を回り、ピョートルはダークサンたちとの会談を求める。その間に、ロンはもう一度バクファルクのもとへ赴いていた。訝しげな顔で迎えるバクファルクに、NYと連絡を取って判ったと称して情報を「提供」する。曰く、このキャンプのガルーの中にはスパイが潜り込んでおり、サイバー・ドッグスと通じている。早く見つけ出さないと大変なことになる。ロードにつきものの猜疑心にこの嘘は火を点けた。見事に乗せられて怒り心頭のバクファルクだが、素朴な疑問を口にする理性は残っていた。
「なぜそんなことを俺に?」
「それは……わかるでしょう?」(無駄に顔を赤らめつつ俯くロン。外見は1)
 ともあれ、バクファルクはガルーたちを全員呼び集め始めた。ほくそえみつつ、ロンは部屋を出る。
 その頃ピョートルは、残りのメンバーを伴って、ダークサンとの会談の席で脂汗を流していた。地図を引き渡す条件をだらだらと持ち出しつつ時間を稼ぐ。まだか。爆撃はまだか。時計の針の進みは気が遠くなるほど遅い。T-34は、気配はあるのに姿を見せない。ネヴァモアの顔には徐々に疑念の色が濃くなっている。
 その時、遠くから飛行機の爆音が聞こえてきた。全員がはっと顔を上げる。急速に接近する爆音は地面を叩きつける衝撃波となってキャンプを揺るがした。一斉に席を蹴る面々。「裏切ったな」ダークサンがグランドクレイブを抜き払う。鮫のような笑いで答えるピョートル。阿呆め、何をガキのようなことを。ネヴァモアの肩で狂ったように鴉が鳴き喚く。T-34がどこからともなく現れ、部屋の出口に立ち塞がり、クロークの下からずるりと.30口径の重機関銃を引きずり出す。
 牙と爪が、銀の刃と銃弾が、狭い部屋の中に死の軌跡を引いて激しく飛び交った。勝負は見えていた。ニドホッグの会は、ディスコード・ペンタゴンが自分たちの縄張りの中でこのように攻撃してくることは考慮しておらず、通常の警戒こそしていたものの、ほぼ完全に不意を衝かれていた。数合でダークサンが斬り倒され、重機関銃を有効に使うこともできないままT-34も死亡。強力な精霊を召喚しようとしていたネヴァモアだが、ウィーバーの蜘蛛の巣で鉄壁の固さとなったゴーントレットが、シャーマンとアンブラとの繋がりを断ち切っていた。ネヴァモアは何もできないまま死に、開いた戸口から逃げようとした鴉の精霊までもがワッパーに捕獲され、封印されてしまった。
 外ではロンが近接航空支援の到着を目撃していた。曇天のキャンバスに白い雲の筋を引いて急降下するのはハリアーVTOL戦闘機の編隊だ。機首の多銃身機関砲が低く恐ろしい唸りを上げて回転し、地上の建造物を紙細工のように貫く。翼の下からミサイルが離れ、バクファルクたちのいる建物に向かって美しい航跡を描いた。建物は壁の内側から膨れ上がるように爆発し、高熱と爆風が17人のシャドウロードをばらばらに吹き飛ばした。半地下の大きな建物は何発ものミサイルを受けて、地下へ倒れ込むように崩壊した。歓声を上げて手を振るロンに、ハリアーのコックピットに寝そべったパイロットが前足を振ってみせる。パイロットはサイバー・ドッグスの狼族だ。任務を終えたハリアーの編隊は機体をバンクさせて方向転換し、元の基地へと帰って行った。
 爆音が去り、束の間の静寂が訪れた。しかしそれは長続きしなかった。地面が揺れ出し、崩壊した半地下の建物が崩れ始めた。そこから異様なものが姿を現わし、地上に這い出すと、曇天を背にして瓦礫の中、十数メートルの高さにまで黒々と聳え立った。
 ビルほどもある、歩く肉と骨と歯と組織の固まり。ヴォズド。サバトのヴァンパイア、ツィミーシィ氏族の手になるウォー・グールである。少なくとも15人のグールから「製造」されるこの恐るべき怪物は、ダークエイジの昔には攻城兵器として用いられ、地響きを立ててカルパチア山脈の夜をのし歩いていたという。それが生き残っていたのだ。この流血の地、バルカンに。
 立ち昇る炎と煙の中、ヴォズドは百の口を開けて吠えた。それは咆哮というより、終わることのない苦痛と狂気の絶叫だった。よたよたと太い足を踏み出すたびに、自重で肉がひしゃげ、腱がちぎれ、骨が折れる。それでも歩みは止まらない。腕のような塊を振り上げると身体全体がねじれ、組織と骨が一斉に弾裂する身の毛のよだつような音が響き渡る。高々と振り上げられた腕は頭上でホウキのようにばらけ、鋭い爪の生えた、関節のある触手の群れの様相を呈した。引き絞られたカタパルトが弾けるように、爪と歯の壁が振り下ろされる。異様な筋肉と血の力から引き出されたパワーが、触手の届く範囲にあるものを凄まじい勢いで破壊していく。
 逃げるわけにはいかない。これはワームの――<魂喰らい>の、最も邪悪な魔法の一つだ。一行は散開して次々に攻撃を仕掛ける。シェナンドーがカイリンドーで脚を攻め、よろめいたところをピョートルとスナフクが切りまくるというお馴染みの戦法。しかし――通らない。コンクリートのように分厚い肉の壁が攻撃を吸収している。手応えがあったと思っても、ヴォズドは體血を消費して速やかに傷を癒してしまう。
 このままでは埒があかない。ワッパーはクラッシング・ブーン・ブーンに祈りを捧げる。戦争のトーテムは召喚に応えた。雲を切り裂いて降臨するB-2スピリットは、ゆっくりと歩を進めるヴォズドにミサイルを発射する。命中。血と肉片が爆散し、聳え立つ巨体が煙を吹く。だが、倒れない。戦車を破壊するミサイルの直撃を受けながら、ヴォズドはなおも歩き続け、破壊の渦を撒き散らしている(*8)。
 使える手段はすべて投入した。あとは全力を尽くすだけだ。一行は最後の怒り、最後の意志力まで絞り尽くす覚悟で攻撃を繰り返す。クラッシング・ブーン・ブーンは毎ラウンド、上空からの爆撃で支援する。
 再生し続ける肉塊を何度切り刻んだか。確実にヴォズドは弱ってきている。もう少しだ。もう少しで倒れる。巨体に溜め込んだ血もやがて底をつく。そうなれば勝ちだ。
 とどめを刺したのはスナフクだった。マミー・アミュレットがしなやかなストライダーの体躯に死者の力を漲らせ、筋肉を高張鋼に変えていた。ハカールを手に跳躍したスナフクは、ワームに対する憎悪を込めて、雄叫びを上げながら、前も後ろもないヴォズドの胴体を滅茶苦茶に斬りつけ続けた。噴き上がるどす黒い血に染まったその姿は鬼神のようだ。やがてヴォズドはゆっくりとよろめき、とうとう地を揺るがして倒れ伏した。
 急速に腐敗していくヴォズドの死体の傍で荒い息をつく一行。キャンプは完全に廃墟と化していた。雲が徐々に晴れ、黄昏の光があたりを染める。キンフォークたちが隠れ場所からおずおずと出て来て、遠巻きに見ている。
 辺りを浄化し、人心地がついてから、一行はこれからのことについて話し合う。今回は、次の目的地を示すようなものには出会わなかった。ニドホッグの会から開放されたキンフォークたちをこのまま放り出しておくのも無責任だし、ここは希望者を連れて一旦ニューヨークに帰ろう。久々の帰還だ。
 ちらほらと雪が降り出す空の下、一行は遠い空港を目指して瓦礫の中を歩き始めた。

 
 注釈:
 *1 ……知覚判定にボッチしたので。よく燃える人。
 *2 ……「説得力」のギフトの使用に失敗し、「君の回りの死者は、耳がない人ばっかりだ」と適当なことを言われたワッパーくんと、葬送の儀式の知識を生かして念仏を唱えながら列を突っ切ったスナフクが面白かったです。
 *3 ……シャドウロード全員、「弱点看破」のギフトを使用しつつ観戦。しかも池上遼一面。嫌な光景。
 *4 ……いくらタネナシになったからって。「今まで男だと明言したことは一度もない」からって。どうかと。でも美人じゃないかっこいい系ナオンなのはちょっと良い。
 *5 ……ほんとに。
 *6 ……使い捨てで、一回だけ航空支援を要請できるタレン扱い。
 *7 ……ワッパーがナターシャに爆撃開始時刻を話し始めた途端、他のプレイヤーから一斉に沸き上がる声にならない悲鳴と罵声。プチ面白かったです。
 *8 ……クラッシング・ブーン・ブーンのミサイルは、アクロス・アマゾン掲載のLAW携帯ミサイルのデータを使用。ほんとは戦闘機が積んでる兵器はこんなもんじゃないですが、PCの見せ場を奪うこともなく、バランスは悪くなかったように思います。余談ですが、このセッション後しばらく経って『ゾンビ屋れい子』を読んだら、3巻にこの戦闘とそっくりなシーンがあって笑ってしまったり。読む前にやっといてよかったと安堵。
 
 感想:
 
 ……なんでこんなに長く書いてるんだ。馬鹿か(自責)
 
 えーと。今回は3つの道を用意してありました。
 
 1:ヴォズドと戦う。
 2:ハリアーと戦う。
 3:20人のガルーとヘクス戦闘。
 
 地図を渡せという要求に対してどういう態度を取るかで展開が変わるという寸法。
 結局、サイバー・ドッグス&ウィーバー勢力と手を結んだわけですが。
 世界設定サプリ、A World of Rageからの最新情勢も盛り込んであります。
 しかし、戦闘ゲーなのに戦術を練るのが面倒極まりないのはどうにかならないものか。特に処理が重いのがギフトで、敵NPCが作りにくいったら。早く日本語訳されないかなあ。そうすればちょっとはマシになるはず。
 行動の自由度は、前回の反省を生かして高めに設定。感触としては、前回と今回の中間ぐらいがいい感じかしら。小イベントの連結というモジュール構造が基本で、各イベントでの自由度が充分高ければ、ストーリーが破綻することもなく、ゲーム的にも面白いセッションができるのではないかと。ゲーム的と言っても、WoDのルールシステム自体は別に面白いわけじゃないので、プレイヤーのとんちやアイデアをルールに乗っけて生かすことができるようになる、ぐらいの意味で。
 WoDはとかくシナリオが作りにくいと言われるし、実際そうだと思いますが、セッションが一定面白くなるようなシナリオの構造が確立できれば、かなりとっつきやすくなるんじゃないかと考えています。WoDのルールブックには、ストーリーテリングの方法やチップスがいっぱい載ってますが、具体的な序破急の付け方に関しては記述が曖昧ですよね。多少なりともその辺に触れてるWerewolf Storytellers Handbookは、私の中ではWtAのベストサプリかもしれません。
 


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