Story 5:Shouldn't have to be like that
あるいは『タマタマ大作戦 取って取られて大騒ぎ』(または『子種にまつわるエトセトラ』
 
 登場NPC:
 ロンドン=ワルシャワ=ニューヨーク
 ベス・ポル・ヌーミン(ランク4ストライダー、ケルン・ウォーダー)
 ゾショー・アルメイン(ランク3ストライダー、ミストレス・オブ・ザ・ライト)
 サム・パテル(ランク3ストライダー、キーパー・オブ・ザ・ランド)
 シャドウ・ロードの「オブザーバー」
 アリゾナから来たウェンディゴ
 ファームリング×2
 ヴォルテックス
 ストームクロウ×2
 ウォーター・エレメンタル
 アライグマの精霊
 ペンテックス・ファースト・チーム×4
 ブラック・スパイラル・ダンサー×2
 〈リバース・オン・ザ・スカッフォルド〉イエロー・ペリル
 〈スキンチェンジャー〉
 レイスいっぱい
 
 展開:
「殺せ……殺せ……」女は暗闇の中でそう囁いている。立ちすくむワッパーの方へよろよろと近付いてくるその身体は血塗れだ。全身の生皮を剥がれた無惨な姿であっても、女がガルーであることは判った。ワッパーは慌てて女に駆け寄り、助けを呼ぼうとした。だが、女はワッパーの肩を掴み、苦痛の吐息の中から言葉を絞り出す。「彼女を殺せ……彼女を殺せ……」
 ワッパーは汗びっしょりで目を覚ました。ホテルの快適な一室。窓からカサブランカの街の喧騒が流れ込んでくる。ホイール・オブ・プター到着後、一行はオテル・ドゥ・ヤースミーンに宿を取っていた。
 隣接したシドゥリズ・カフェでは、乾いた暑い空気の中、コーヒーを前にしてロンとピョートルが座っていた。二人とも、この埃っぽい田舎町には一日でうんざりしていた。交通の要所のケルンだけあって、カフェには様々な部族のガルーの旅行者がたむろしている。目ざとくシャドウロードを見つけて擦り寄るピョートル。彼はロードが(勝手に)送り込んだ、ケルンの「オブザーバー」だった。パックの使命を話し、ゴマをすりながら自分を売り込むピョートル。「何かあったら是非私めにおっしゃってください。このグランドクレイブはシャドウロードのためにあるのです。その代わり、私の名前を上の方に……」「うむうむ、考えておこう」
 シェナンドーは異国の香辛料の匂いが漂う街中をふらふらと彷徨ううちに、アリゾナから来たというウェンディゴの狼族に出会い意気投合。ケルンの力が弱まっているという噂を聞き込んでくる。スナフクはケルンの中央、ムスリムが出入りするモスク・オブ・アンファに赴き、地図の鑑定の件でゾショー・アルメインへのアポイントメントを取り付ける。「今夜のムートで聞いてみるといい」と、応対したサム・パテル
 夜、モスクにてムートが開催される。ケルンへのチミナージ(通行料)として支払われたタレンやフェティッシュをサクリファイスし、ケルンの力の補充を行なっている司祭ゾショー。ケルンの弱体化の噂は本当のようだ。宴会が始まり、ロンは自分たちの冒険を歌(*1)にして披露、大喝采を浴びる。また、ロンはランク2に昇格。ピョートルは念願のクレイブ・デュエリング(*2)の手解きを受ける。矍鑠とした老婦人であるゾショーは、地図の件については後で「静寂の家」(*3)で話そうと言ってくれる。
 ムート後の狂走(*4)にて、一行は市街の家屋の屋根に首のないガルーの姿を見る。行ってみると、ワームの臭いが残っていたが、血が少し滴っていただけでガルーの影も形もない。アンブラも同様。Rite of Questing Stoneを使ったところ、残った血の滴は方向を指し示すことができず、戸惑ったようにぐるぐると回るばかりだった。
 次の日、スナフクに導かれて静寂の家を訪れた一行は、地図を前にしてゾショーと話し合う。ホイール・オブ・プターの上にある原野のピクトグラムは、パンゲア・レルムを示すのではないかというのがゾショーの意見。そしてその後は、ブラック・スパイラル・ダンサーの領域かシャドウ・ロードの領域のどちらかを選んで進んでいくことになるはずだ、と。(*5)
 ゾショーはケルンの地下へ一行を導く。アールーンの衛兵のいる階段通路を下り、祖先の眠る墓所を抜けて入った部屋は大きな円筒形の空間。壁と天井は黒いオニキスで、白い光点が一面に散りばめられている。その様はさながら星空のようだ。
 光点は実際に空の星座に対応した配置になっていた。見ているうちにも、石の表面の星空はゆっくりと巡ってゆく。床には仄かに光る何本もの小道が、曲がりくねり、絡み合いながら放射状に延びていた。いずれの小道も、遠くの壁に突き当たって消えている。これがケルンの中心、プターの車輪(*6)だ。車輪は単一のムーン・ブリッジではなく、多数のゲイトウェイが一点に集結する交差点なのだ。
 その星空の一角、地上近くに黒い染みがあった。これがケルンの弱体化の原因だろうとゾショーは言い、一行に調査を依頼する。車輪を利用する旅行者の数は多く、タイムテーブルはぎっしり詰まっているのだが、仕事をこなしてくれれば直々にパンゲアへのムーン・ブリッジを開いてくれると言う。
 ピョートルはゾショーにゴマをすることを忘れない。
「我々にお任せを。このグランドクレイブは、ホイール・オブ・プターのものとお考えください」
「ああ、じゃあそのクレイブをチミナージに貰おうかね」
「いえいえ、これは私のものです」
 どっちだ。
 スナフクは地図を買い込み、星空の染みの方向に何があるかを調査。どうやら小さな遺跡があるようだが、サハラが緑に覆われていたころのものらしく、詳しいことは判らない。ピョートルはシドゥリズ・カフェに飛んでいき、シャドウロードの「オブザーバー」に成り行きをご注進。更に国際電話を掛け、ニューヨークの上司バクファルクに状況を報告。代わりにバクファルクは、第3話でピョートルがBSDの首を持ち込んだ剥製屋が放火されたことを告げる。首は見つかっていないという。
 一行はアンブラではなく、車を調達して直接現地に行くことにした。昼に出発して砂漠を半日走り、夕暮れに到着。遺跡から距離を置いて車を降り、ペナンブラへ。ゴーントレットはわずか3で、物質世界とアンブラはほとんど重なり合っている。遺跡はほとんど風化して、砂の上にちょっと出ている程度。しかし、地下への穴からベイルファイア(*7)の緑の炎が上がっている。警戒しながら近付いてみると、緑の炎の中でのたうつ人影のような姿をした精霊が2匹。ベイルファイアの精霊、ファームリングだ。ワッパーはヴォルテックス(*8)を缶から出し、ファームリングを挑発させた上で「道迷わせ(Disorient)」のチャームを使用。怒り狂ったファームリングたちは、物陰に隠れた一行に気付かずどこかに行ってしまった。 穴の中には摩耗して読めない石碑が一つあるきり。捜索してみると、石組みに隠し扉を発見。どうしようか迷っていると、ワッパーのボッチのせいでファームリングが戻ってきてしまう。見つからないうちにと隠し扉に飛び込む一行。そこには小さな湖が広がっていた。水上を飛んで偵察するロン。水の下に洞窟があって、どこかに通じているようだ。ワッパーは水の中からウォーター・エレメンタルを召喚。水でできた馬のような精霊が姿を現わす。「僕たちを通してくれない?」と頼むワッパー。つまり安全に運んでいってほしかったようなのだが、STの意地悪でとんちを利かせた精霊は、勝手に(自分で)通れ、バイバイ、などと適当なことを言って去ってしまう。
 しかしそれでもワッパーはめげない。予め召喚・封印しておいたストームクロウ(グランドファーザー・サンダーに使える鴉の精霊)のチャーム、Create Windを使用して、各自の頭の周囲に空気の泡を作る。こうして無事に洞窟を潜り抜けた一行は、砂漠の中の別の湖に出る。ロケットパックで飛び上がり、上空から周囲を偵察するロン。湖の近くには別の遺跡があり、ペンテックスのマークが入ったテントとジープが2台あった。水面に浮かんだスナフクは、一瞬砂丘を歩く首のないガルーを見たような気がしたが、すぐに見失ってしまう。ガルーは何か手に持っているようだったが、詳しく観察する暇はなかった。
 ごろごろ転がっている石の柱に隠れて作戦を練る一行。取り敢えず、ワッパーのアライグマの精霊を偵察に出し、テントの中を探らせようと決定。
「アライグマくん、何か変わったものがあったら持ってきてね」
「うん、わかった!」
「ええと、無理しなくていいから」
「いや、絶対持ってくるね! 任せといてよ!」
「あっ、ちょっと……」
 てってけてぇ、と走っていってしまうアライグマくん。と、テントから変なゴーグル(アンブラを見ることができるワームのフェティッシュ、パワー・ゴーグル)をつけた歩哨らしい男が出てきた。アライグマを見つけた男は、テントの中に声を掛ける。戦闘服姿にステアーAUGを持った兵士がもう一人出てきた。二人の兵士の視線を浴びながらアライグマくんは一散に走る。テントに辿り着くと、ごそごそと中に潜り込む。しばし沈黙。やがて出てきたアライグマくんは、何か抱えている。きょろきょろと周りを見回し、隠れているワッパーの方へ走り寄ってくるアライグマくん。懸命に目を凝らし、何を持っているのか見極めようとするワッパー。それはピンが抜かれたフラグメンテーション・グレネードだ!
「捨てろ! ポイしろ! 今すぐに!」Persuasion(説得力)のギフトまで使って叫ぶワッパー。なんだか怖くなったアライグマくんは、手に持った荷物を物質世界へポイ。手榴弾は12ダメージダイスの威力で即座に爆発(物質世界で)。同時にテントからはファースト・チーム(*9)の兵士が更に二人、ワーム・ファングダガーを持ったBSDが二人現れた。アライグマくんは耳を塞いで逃げ帰ってくる。
 ロンは隠れ場所から飛び出し、全力で後方へ飛行しながらAS-115で弾幕を張る。ロンが囮になっている間に、他のメンバーは敵の後ろへ回り込む。隠密判定に成功し、キャンプ周辺に張られた監視機器にも引っ掛からず不意打ちに成功。ピョートルはいつもの通り、ハカールで背後からBSDを細切れにする。カイリンドーの腕を上げたシェナンドーの鉤爪は、回避にボッチしたファースト・チームのフォモールを捉え、腰から上を文字どおり吹っ飛ばした。ロンはステアーのバースト射撃を喰らい、行動不能に陥って湖に落下。Rageで回復判定を試みるが、Incまでしか回復しない。バトルスカー決定のダイスが一つ加算され、2d10を振った結果は期待値の11。あわれ、ロンは20歳の若さで二度と子供を持てない身体になってしまった。平たく言うと、去勢されたのだ。なんという悲劇。ぷ
 しかしパックに与えられた痛手はそれくらい。不意打ちが祟って、敵戦力は速やかに殲滅させられた。フォモリの一人はベイルファイア・フレイムスロウワー(火炎放射器)というおっかねえ武器を持っていたのだが、ゴーストバスターズみたいな恰好を警戒されてさっさと殺されてしまったのだ。
 敵を倒した一行はテントの中を調べる。残された書類などから見るに、ここからホイール・オブ・プターに通じる水脈に害毒を流し込んでいたらしい。スナフクがRite of Cleansingで辺りをすっかりきれいにする。また、ペンテックスの調査結果を調べていたピョートルは、この地下に大昔の失われたケルンが眠っていることに気付く。大手柄に狂喜乱舞する一行。
 そのとき、砂丘の向こうから大勢の影が現れる。遺跡を囲んで一行を見下ろす彼らは太古の死霊たちだ。その中から、首のないガルーが進み出る。片手にグランドクレイブ、片手に首をぶらさげている。見覚えのある首――ピョートルが自宅で倒したBSDだ。(*10)
 BSDの死霊は自分の首を持ち上げて、イエロー・ペリルと改めて名乗る。「お前たちの活躍は見せてもらっている。その調子で進むがいい。楽しみにしているぞ」
 イエロー・ペリルの隣にもう一人誰かが現れる。ロンドン=ワルシャワ=ニューヨークだ。彼女は額から股間までを自分の爪で引き裂くと、生皮を脱いでその正体を現わした。ジョン・コッブの描きそうな、痩せたBSD。
「あなたの子種は貰ったわ、ワッパーくん――美味しかったわよ」とにやり。悲鳴をあげる哀れなワッパー。
 朝日が射し、彼らは高笑いしながら姿を消す。
「これが明らかになったらパックの恥だ。黙っていてやる。だからお前は、絶対、誰にも言うな」とピョートル。
「ハイ」とワッパー。その横で下腹部を押さえて、なんだか冴えない顔をしているロン。そんな彼らを尻目に、浄化された砂漠は朝日にきらきらと美しく輝いているのだった。
 そこへ一羽のストームクロウがばさばさとやって来る。ピョートルの「ご注進」を受けた「オブザーバー」が、監視のために飛ばしていたのだ。
「ピョートル、よくやった。お前の働きで、このケルンは我々シャドウロードのものとなった。北アフリカにおけるロードの基盤は、更に盤石なものとなるだろう。これからもロードのために励め」
 どう見ても悪の秘密結社である。
 カサブランカに帰還し、まずい事項は全部伏せて一部始終を報告する一行。眠ったケルンの発見にストライダーズは大喜びだ。名声も上がり、スナフクとワッパーもランク2に昇格。でもアルファはピョートルのまま。報酬として新しいギフトや儀式などを教えてもらうと、一行は早々に旅立つことにした。ロードはあのケルンの先取権を主張するだろうし、ぐずぐずしていては面倒を持ち込んだとして白眼視されかねない。
(だが、かかる重大な事態を見過ごしていたとは、あのオブザーバーの無能は明白だ)ピョートルはひとり頭脳を回転させる。(これは上層部に報告しなければなるまい……)
 再びプターの車輪に立つ一行。輝く小道の一本を辿って歩いていくと、徐々に自分が小さくなっていくような感覚に襲われる。いつしか足下は本物のスピリット・パスに変わり、一行は満点の星空の中へ……。

 
 注釈:
 *1 ……打ち込みらしい。歌うにあたって、ロンはCall of the Wyld、Persuasionと二つのギフトを併用。効果的にダイスを加算した。
 *2 ……クレイブ剣術。Players Guide 2ndに収録。
 *3 ……カサブランカにある、ストライダーズの秘密の酒場。
 *4 ……Revel。直訳するとお祭り騒ぎとか歓楽とか。ムートの締めくくりに、みんなでクリノスになってケルンの周辺を駆け回るという、暴走族みたいな風習。周辺住民の皆さんにはきっと迷惑。
 *5 ……プレイヤーのみんなの嫌がることと言ったら。
 *6 ……前日のサタスペセッションとプレイヤーが重なっているため、地下とか車輪とかいう単語に一同びくびく。
 *7 ……Balefire。ワームの火。蛍光グリーンで毒性が強く、ソークできない。
 *8 ……外見はドリームキャストのうずまきマークが想定されているらしい。ちなみにウェンディゴは「どーもくん」。
 *9 ……ペンテックスの擁する、高度に訓練された戦術部隊。
 *10……今はレイスになっている。カサブランカ市街でのRite of Questing Stoneが無効だったのは、シャドウワールドへ移行したから。

 去勢ガイ
画:吉井さん
 感想:
 5回目ともなると、PCたちも随分とアクティブになって、STも色々と楽しませてもらっています。というか、有り体に言って準備不足だったのですが、随分とプレイヤーに助けられた感があります。キャンペーンというと、STの側が壮大なストーリーを考えなきゃならないようなイメージがありましたが、PCやNPCのキャラが立ってくる分、実はシナリオ自体は単純なものの方がいいのかもしれませんね。やあ、楽だ(笑)
 ピョートルはウォーロードというコンセプトはどこへやら、ペテン師めいた行動が多くなっていますな。実際、コンセプト変えるらしいですし。でも暴力的なのは相変わらずなのね(笑)
 シェナンドーは、やはり砂漠の都市ということでちと辛かったですね。血筋とかご先祖さまとかの背景にももうちょっとスポットを当てたいところ。設定では今は秋なので、これからウェンディゴの季節になっていくはずです。
 ロンは(略)。(合掌)。D.N.A.(変な獣人映画ではない)と手を結んでクローンだか子供だかを作ると息巻いていますが、どうなることか。
 スナフクには予めホイール・オブ・プターの情報をちろっと渡しておいたのですが、充分に生かしたとはとても言えず。静寂の家の描写は完全に忘れてたし。エウー。ごめんなさい。
 ワッパーはチャームの使い方が大変巧妙になってきました。精霊やアンブラやギフトというのは、比較的ちゃんとルールが決まっているWtAの世界では、最もノールールな処理が効果的な部分でしょう。今回も、面白ければ採用というのが多かったです。とんち合戦みたいなことになると楽しいのではないでしょうか。
 しかし、敵の戦術も良く練らないと駄目だなあ。やっぱり準備不足はいけません。

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