叢龍
Zhong Lung 四海を統べる龍王達 
「私らはかつて、導き手たる宿星を捨てるという過ちを犯したわ。過ちは繰り返してはならない。緑玉の大母の子らよ、わたくしの足下に跪きて輪廻の智慧を学びなさい・・・・・そのために必要なものは、まず何より忍耐だと知るのです」

■最も古き変化妖怪
■季節を告げる龍
■太古より連なる記憶
■高貴にして風に舞う龍鱗の煌めき

起源
 お聞きなさい、子供達。遠い遠い昔の話、私たちの大いなる母であらせられる、西王母様の物語を始めましょうね。西王母様が天宮から最初の卵を、龍王たる天公様から授かってきたときのお話よ。このお話を聞けば、どうして私たちが風と季節と共にあるのかわかるはずだわ。
 西王母様が可愛らしい五つの卵を青々と草の生い茂る長江の谷間に置かれたのは、美の時代(訳註:神話の時代のこと)のことよ。西王母様は卵を眺めながら、やさしく大事に暖めたの。それから季節がちょうど一回りするまでの間、ご先祖様達は西王母様にお守りあそばされたの。そして春がやってきて、卵はパカリと開いたわ。小さな叢龍のこども達は川面を楽しそうに駆け回って遊んだの。西王母様も一緒になって遊びながら、内緒でみんなに世界の秘密をお授けになられたわ。そうして龍王様のお呼びがかかる日が来たものだから、西王母様はこども達を呼び集めなさったのよ。
 「大好きな坊やたち、よくお聞き。お前達は今から自らの季節と、世界を駆け抜けるための風を定めねばなりません。これは一番最初に産まれた一番賢いお前達への、私の贈り物です」
 一番年長で、太陽の光をあびてきらきら輝くターコイズ色の龍は言いました。「お母様、私は自分たちの産まれた春を選びます。そして再生を約束する東の風を」
 「屯纏、私の息子よ。蒼と翠こそがお前の色となりましょう。そして強くて勇気有るもののふの道こそがお前の道です」西王母様はそう答えられたの。
 次に口を開いたのは二番目に産まれた、金色に輝く龍よ。「母上、私は今私たちが過ごしているこの夏を選びたく存じます。そして暖かさを持ってくる南の風を」
 「南哈霎、私の娘よ。黄色こそがお前の色となり、いくさ人たるお前の兄弟達の助言者にして平和をもたらす者こそがお前の道です」西王母様はまた答えられたわ。
 三番目に産まれた真珠色の龍はこう言ったわ。「母ちゃん、オレは暗闇を行く手がかりを与えてくれるような、冷たい秋風がいいな」
 「賽岔、私の息子よ。白こそがお前の色であり、世界に満ちる数多精霊達の言葉を探し求める龍たることこそ、お前の道です」西王母様はまた答えられたわ。
 四番目に産まれた、墨のように黒い、黒曜石の鱗持つ龍はこう言ったわ。「お母様、冬の寒さと北風が吹き付けてくる感じがあたしには一番ステキなの。それより好きなものなんてないわね」
 「沛呑、私の娘よ。黒こそがお前の色であり、愚者の道を歩むのです。兄弟達に、笑いの智慧というものを見せておあげなさい」西王母様はにっこり笑ったわ。
 深紅の鱗持つ末っ子は、四人の兄弟達をじーっと見ていたわ。大きな目は涙でいっぱい。だって、この子が選べる季節も風向きも、もう残ってはいなかったんですものね。「母さん」彼は言ったわ。「兄上や姉上は自分たちの風と季節を選んだけれど、ボクは一体何を選べばいいの?」
 西王母様はその腕を、高く天上目掛けて差し上げたの。「最も若くて謙虚な坊や、お前には尊き賢人の道が与えられるでしょう。お前こそは全ての風と季節を極めしもの。深紅の鮮血が体に行き渡るがごとくに、坊やの精髄はあらゆる叢龍に行き渡るわ。お前のことはあらゆる学者と思想家、歌い手と語り部の記憶に永遠に残るでしょう。お前こそは先祖の智慧を輪廻が再び始まる日まで受け継ぐものなのです」
 こうして叢龍はこの世界に、全ての季節の間にしてあらゆる風の吹くところ、ガイアの智慧を守護する者として使わされたのよ。

解説
 あらゆる仙達から、叢龍は神聖なるガイアの記憶を守るものとして崇敬されています。彼らは伝説の時代、真紅の女帝(女禍)と黒龍(共工)によって生み出されたのだと言われているのです。叢龍達は自分たちを最古の変化妖怪であり、調和と純粋な思索を尊ぶ最初の存在だと見なしています。祖先である龍王を彼らは自らと共にある賢明にして困った存在だ、と考えているようです。同族たるモコレ(ワークロコダイル)同様、彼らもまた龍王の心臓より生まれたという太陽を崇めています。太陽こそは叢龍とその卵を暖め育む存在なのです。
 モコレ達がかつての戦士の記憶、恐竜であったころの夢とつながっているように、彼らは神話の時代、龍王であったころの記憶と深く繋がっています。彼らの目的は今も変わらず、ガイアの記憶を守り続けることです。

社会
 男性の多くは一人で住まい、戦隊などとつるむのをよしとしません。彼らが他者と関わるのは基本的にお嫁さんを見つける時と、住まいを守るときだけです。女性は3〜4人で庭徒と呼ばれるグループを作り、妊婦や子供を守ろうとします。女性のキンフォークも同様のグループを作りますが、この場合はたいてい艾衣(叔母というほどの意味)と呼ばれる世話役たる高齢の叢龍が取り仕切ります。艾衣はたいていは出産経験を持つ、経験豊富な女性で、妊婦と卵を、一人前になるまで守るのです。
 ガルゥ同様、彼らもまた親によって形質が決定されます。モコレと違って、叢龍達は人間生まれなら人間と、鰐生まれなら鰐とつがって子を成すのが基本であり、生まれの違う者同士で交わることはまずありません。なお、メティスは龍たる記憶を思い出すことができないので、叢龍になることはできないようです。
 結婚は彼らに取ってもっとも重要な儀式です。男性は(キンフォークも叢龍も)、自分がどれだけの物語を織りなし、どれほどの知識を有しているかを、艾衣やお目当ての女性の耳に入るよう宣伝せねばなりません。女性側には完全な選択権があり、たいてい要求は過酷です。男は恋敵と、贈り物の質や語る物語で勝負しなければなりません。ドラコなどは一騎打ちでケリをつけることもあるようですが、まずありえないことです。問答が好まれますが、相手を怒らせたり欠点を指摘するような言動はまずなされません。こういった局面で怒りに燃えたからと言って、相手を殴るようなことはまずありません(相手が殴ってきたなら、話は別です)。
 男性は子供が産まれて、母子に十分な恩恵を与えたと艾衣が見なすまで、自宅に帰ることはできません。彼らの家族の絆はモコレ同様にとても強いものです。賽岔(セウージ)は生まれた子供を祝福し、世界の全てに向けて示す存在です。彼らはその子の陰陽両界への始めての旅路を司る存在でもあります。

形質
 男性の叢龍は魁龍と呼ばれます。外見的な特徴はナマズのような髭と長い角、それから顎の下に埋め込まれた真珠です。女性は璃龍と呼ばれ、角と真珠のかわりに、頭を覆う華麗な羽根飾りと、細長い鼻が特徴です。いかなる形態であろうと彼らは威厳に満ちた存在であり、周囲の変化妖怪達は意志の力を奮い起こさねば変身すら困難になるほどです。
 彼らは五感で感じる以上の情報を内なる智慧から引き出す術に長けており、その神秘に関する知識では中原でも右に出る者はいないでしょう。この高貴な一族に欠点があるとすれば、その純真さと、周囲からは冷静であると見なされている点に尽きます。実のところ彼らは感情の動物であり、他のシェイプチェンジャー同様にレイジを持つ存在なのです。怒り狂った叢龍を敵に回すのは、命を惜しまない馬鹿者のすることです。そんなわけで彼らは人や獣と関わるのが面倒になって、たいていは隠棲し、中には完全に現世と関わりを断つ者もいるようです。
 彼らは数の多い種族ではなく、どちらかと言えば人から生まれた者がドラコ(爬虫類生まれ)より多いようです。多くは中国やチベットに住んでおり、特に長江は鰐達の楽園です。その他、インドネシアに住まう世界最大の爬虫類コモドドラゴンの血を引くもの、ベトナム、カンボジア、ハワイ出身の者もいるようです。
 朝鮮や日本にも彼らの血を引く者はいますが、鰐が住んでいないこれらの土地では龍の力は強くなく、彼らは海外に結婚相手を求めるという社会的タブーを犯すことさえあります。
  彼らは人、鰐、龍の三形態を取りますが、人以外の二形態は個人差に富んでいます。

台詞
「ほーっほっほっほっ!
 所詮あなた達ガルゥなど、命令に従って獲物を噛み裂く私たちの猟犬に過ぎないのよっ!!
 自分たちがガイアの恩寵篤き至高の存在だなどと思い上がって許されるのは、
 わたくし達龍族の特権ですわ!!」
                                 ・・・・・・龍造寺 麗

偏見
 八犬:輪廻を見通すには目が曇ってしまって、バカの一つ覚えそのものですわ。でも、西王母様の衛士としてはいささか盲いて不的確と言わざるを得ませんわね。
 虎族:試練の時代には血に飢えた貴族として、わたくし達の敵手であった輩ですわね。彼らが節制を身につけたかどうかは知りませんけれど、私が思うには、どうせ何も学んではいないんじゃないですの?
 :トリックスター以上の者ではありませんわね。この緑玉の太母に使える最も若き者達の、道化たそぶりには気をお気をつけあそばせ。狐達のあいまいな伝承はよろしいのですけれど、狡猾な嘘ときたら、最低ですわ。
 土蜘蛛:妖蛆の螺旋に最も深く落下したこの者達の動向にはいつも注意しなければなりませんわね。けれど、様々な視点と智慧を有しているのは、なかなか興味深いですわ。
 ナーガ:輪廻の車輪を自他の血で潤す潤滑油たる者達ですわね。
 鼠族:賢明で役に立つ、素早き秘密の盗みて達ですことよ。彼らに親切にして差し上げれば、千倍にもして返礼してくださいますわ。
 鮫人:わたくし達が厳しく言っているというのに、相変わらず野蛮で下品ですわね。けれど私たちは同じ水から生まれて同じ雷神、天公の加護を受ける者。良き規範たれるよう、お互いに努力する必要がありますわ。
 天狗:素晴らしい武術と、鼠族に匹敵する手練の技。そして何より、素敵な知識の管理者達ですわよ。でも彼らは八犬と結んでいますから、なんとか仲違いさせるようにしなければね。
 日没の民(西洋の同族達):ほとんどの者は私たちを過去にしがみつくボケ老人とでも思っているようですわね。けれど真実を見通す力のある学者であるならば、私たちは歓迎いたしましてよ。 


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